| なぜ小児科医が耳を診なければならないのか |
小児の中耳炎は、珍しい疾患ではありません。三歳までに約70%の子は中耳炎に罹患するといわれています。すなわち、子どもがかぜをひいたときかなりの確率で中耳炎を併発していることが多いのです。子どもはかぜをひいて鼻の粘膜の状態が不良になると、のどと耳との間の耳管という管を通って、中耳腔に入り込んで中耳炎になりやすいのです。 ですから、子どものかぜを診療するにおいて耳や鼻の状態を把握することが大切です。そして鼻腔内の菌を耳や下気道(気管や肺)に侵入させないようにコントロールすることが上手にかぜをなおすポイントになるのです。 小児科医の中には耳や鼻の不調は耳鼻科にゆだねる医師がいますが、それであればその小児科医は子どものかぜは診療することはできないということになります。きちんと中耳炎の診断がつけられない状況で、漫然と抗生物質がはいったかぜの薬を飲んでいると、子どもは耳の不調をよっぽど痛くならないと訴えませんので、中耳炎が中途半端な状態になり、微熱や鼻汁がよくならない状況が続きます。 |

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| どの科が子どもの中耳炎を診るべきか |
中耳炎は耳の病気であり、基本的には耳の専門家である耳鼻科の担当になると思います。しかし小児においては、気道感染(いわゆる「かぜ」)に中耳炎が併発することはよくあることです。ですから小児科医であれば、ふだんの診療で鼓膜を面倒がらずに観察しているはずです。その中には鼓膜の炎症の評価が正確にできる小児科医はいますし、耳の処置にも熟達している小児科医もいます。 確かに六歳以上であれば、訴えもほぼ正確ですし、器官も独立し中耳炎が全身的な症状に波及することは少ないので、耳鼻科医でも問題ないと思います。しかし六歳以下中耳炎では耳痛等の中耳炎に特異的訴えがない場合がありますし、高熱、気管支炎や下痢など点滴も含めた全身的治療管理が必要になることもあります。特に二歳未満においては、発語、嚥下等の喉頭機能の未完成であること、感情等で啼泣や嘔吐することで耳管に負担がかかりやすい子がいること、起立より寝そべっていることが多いこと、食事ではミルクなどの液体のものが中心であることなど、中耳炎をおこしやすい背景があります。そしてこれらの身体的、運動能力的、免疫的な未完成さは、同じ年齢でも発達段階に個人差があり、薬物や局所治療ばかりでなく生活や育児も含めた包括的な指導も必要になることが多いのです。これらを全部耳鼻科に委ねてしまうのは耳鼻科の先生には重荷です。ですから六歳以下、特に二歳未満の中耳炎については、耳鼻科医の協力が場合によっては必要なときがあるかもしれませんが、小さな子の特性を理解している専門医である小児科医が中耳炎の診療には中心となってかかわらなければならないと考えます。 |

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| 子どものかぜに中耳炎が合併しやすい理由 |
| それではどうして子どもがかぜをひくと中耳炎になりやすいのでしょうか。その理由はたくさんあります。まず子どもの耳管はのどから平行に耳に通じていること。子どもの体格の割には太いこと。子どもは寝そべっていいることが多いこと。よく吐くことが多いこと。鼻が詰まっていてるときに、泣いたり、息こらえたり、咳き込んだりすること。このようなことは、のどや鼻の細菌が容易に耳に上がる要因になります。また様々のウィルスの免疫が獲得されていない年齢においては、頻繁に鼻粘膜にウィルス感染がおこり、鼻粘膜の組織が炎症で傷んでいると自浄能力が低下し、病原菌が生着しやすくなります。また自分で鼻をかめないと病原菌が増殖し、副鼻腔は病原菌の倉庫になります。このような理由で保育園に行きはじめた小さな子は、中耳炎になりやすいのです。 |

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| 中耳炎の病原菌の起源 |
| 中耳炎の原因となる細菌は肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、カタル菌が多いとされています。これらは耳管をとおって鼻腔からやってきます。健康な子の鼻腔粘膜は常在菌という菌で覆われています。これらの菌は粘膜に傷害を与えたりしません。またこれらの菌が鼻粘膜に密生することにより、粘膜に傷害を与えるような病原菌が住み着くスペースを与えないでいるのです。ところが粘膜がウィルス感染を繰り返すことにより荒れたり、抗生物質が乱用されたりすると常在菌が住みづらくなるのです。そこになんらかの原因(保育園等での接触等)で抗生物質に抵抗性がある病原菌が鼻腔内に入りこむと、鼻粘膜に住み着きます。そして体の疲れやウィルス感染などによる免疫力の低下時に病原菌が増加します。そして鼻を自分でかめない年齢の子においては、病原菌が副鼻腔内にためこまれ、耳や肺に侵入する機会をうかがっているのです。中耳炎の治療とは、病原菌に対する抗生物質というような単純なものではないのです。鼻粘膜の状態を把握し、常在菌の優位の鼻粘膜に戻してやり、それを維持することが小さい子ほど重要なのです。 |

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| 子どもの中耳炎の治療 |
| 中耳炎の治療において重要なのは中耳炎の程度によって対応が違うということです。もちろん発熱や耳痛がある急性期は、病原菌に対して効果ある抗生剤の投与を適正な量と期間服用することが大切です。また病原菌がかなり多かったり(stage\x{fffd}W)、抗生物質に対して抵抗性があるときは、切開排膿や点滴による静脈投与も効果あります。しかし中耳炎が軽症な場合は、抗生剤を投与しないで経過をみることも大切です。前に述べましたように子どもは、かぜをひくたびにしょちゅう中耳炎になるので、軽度な中耳炎まで抗生剤を投与したらきりがありませんし、鼻腔内の常在菌を破壊したり、抗生剤に効かない菌が生まれる機会をつくります。したがって場合によっては、中耳炎があっても抗生剤を投与せず、鼻腔内の状態を吸入や鼻水をおさえる薬等で改善することで、中耳炎が軽快することを期待することもあります。また年齢によって、治療時の配慮が異なります。まだ立てない子や哺乳瓶を使う子、言葉がまだ十分でてない年齢の子は、食事のときにできるだけ立てているように指導します。また三歳以上になれば、鼻をよくかむように指導します。五歳になっても繰り返す子はアデノイドとの関連がありますので、摘出も考慮されます。でもだいたいの子は、鼻をかめるようになり、かぜをひきつくしてしまい免疫が安定し、鼻粘膜の健康な状態が維持されると病原菌はどこかに押し出されてしまい、五歳のころまでには中耳炎はおきなくなってきます。 |

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